【”選びながら生きる”ことの大切さ】君の膵臓をたべたい/住野よる

ページの隙間から失礼します。てるまれです。

今回は、2016年「本屋大賞」2位をはじめとして数々の賞を受賞しつつ、実写版・アニメ版ともに映画化もされている作品、住野よる先生の『君の膵臓をたべたい』をご紹介します。

目次

『君の膵臓をたべたい』はどんな人にオススメ?

  • 感動できる小説が読みたい人
  • 高校生の青春や葛藤を体験したい人
  • まだ小説を読み慣れていない人

『君の膵臓をたべたい』。とてもインパクトのあるタイトルですよね。

実写版・アニメ版ともに映画化もされ話題になった作品なので、名前くらいは聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか?

字面だけ見ていると、怪物が人を捕食しているシーンが頭に浮かんできます……。

てるまれ

「膵臓をたべたい」と告白されるなんて、なんだか怖いですよね (笑)

ですが、この意味深なタイトルは、作中において意味を持つキーワードなのです。

本作『君の膵臓をたべたい』は、とある秘密を共有した2人の高校生の交流と顛末を描く青春小説。

涙なしには語れない、多くの方を魅了した物語をネタバレ少なめでレビューしていきたいと思います。

てるまれ

下記グラフは、あくまで私個人の評価となります!

偶然、僕が病院で拾った1冊の文庫本。タイトルは「共病文庫」。
それはクラスメイトである山内桜良が綴っていた、秘密の日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。

病を患う彼女にさえ、平等につきつけられる残酷な現実。
【名前のない僕】と【日常のない彼女】が紡ぐ、終わりから始まる物語。
全ての予想を裏切る結末まで、一気読み必至!

住野よる『君の膵臓をたべたい』 双葉社

衝撃的なプロローグで幕を開ける物語

まず、本作の印象的な場面といえばプロローグでしょう。

本作『君の膵臓をたべたい』は、主人公である「僕」のクラスメイトである山内桜良(やまうち さくら)の葬儀から始まります。

そう。読者は1行目で、ヒロインがすでに亡くなっていることを知るのです。

「僕」は桜良のお葬式や通夜には足を運ばずに、彼女へ返しそびれてしまった文庫本を自宅でひっそりと読んでいるのですが、この場面はやけに感情乏しく描かれていたと記憶に残っています。

しかし、読了後に改めてこの部分を読み返すと、この瞬間に「僕」が抱いていたものが垣間見え、どうしようもなく切ない気持ちになってしまうのです。

「僕」と山内桜良の共有する”とある秘密”

物語は過去に遡ります。

「僕」は、4月に盲腸の手術のために病院を訪れていたところ、クラスメイトである山内桜良の秘密を知ることになります。

それは、彼女が膵臓の病で余命宣告を受けているという事実。

偶然、秘密を共有することになった「僕」と桜良ですが、2人はとても対極的な存在でした。

物語の語り部である「僕」は、ドライな性格の屁理屈屋。

クラスでは目立たず、友達もいません。それどころか、他人に興味がない素振りすら見せます。

それに対して桜良は、絵に描いたような天真爛漫な性格。

表情豊かで元気いっぱい。もちろんクラスでは人気者で、自身の湧き出る衝動に正直な女の子。

「秘密を共有するクラスメイト」になってしまった「僕」は、秘密を共有したことで桜良と親密になるうち、次第に彼女に惹かれていき……。

てるまれ

徐々に距離を寄せ合っていく2人の姿は、まさに青春と呼べるものでした!

”仕掛け”を作る「僕」の

本作における「僕」のような、名前が明かされない語り手は、二人称で呼ばれる際に「あなた」や「おまえ」などを用いられるのが一般的です。

主人公であり語り部の「僕」は、誰かに名前を呼ばれると、相手がどう思って呼んでいるのかを想像する癖があります。

この癖は、作中における「僕」の名前を【 】内の言葉に置き換えることで描写されています。

「だから、結局【秘密を知っているクラスメイト】くんにしか頼めないよ」

住野よる『君の膵臓をたべたい』 双葉社

「え、だって、桜良、【根暗そうなクラスメイト】くんと仲いいの?」

住野よる『君の膵臓をたべたい』 双葉社

この癖を使った”仕掛け”によって、「僕」の名前は本作における大きな謎のひとつになっている他、読者に登場人物から見た「僕」の印象がダイレクトに伝わってくるのです。

当然、登場人物との関係が変わっていくごとに、この二人称も変わっていきます。

てるまれ

この変化に注目しながら読んでみると、本作をより深く楽しめるかと思います。

「僕」の変化と桜良の結末

さて、2人の微笑ましい日常がやがて終わりを迎えることを、読者は知っています。

なぜなら、プロローグで語られた桜良の葬儀が、物語の結末を読者に暗示しているから。

あの衝撃的なプロローグを、常に頭の片隅に抱えたまま読む終盤は、本当に胸が締め付けられるようでした。

と——しんみり思っていたのも束の間、終盤には想像できない展開が待ち受けています。

桜良との出会いを経て、変化していく「僕」の心象。きっと、彼の出した答えに、心揺さぶられない人はいないでしょう。

あえてネタバレはしないので、物語の結末は、ぜひ読んで確かめてみてください。

意思と選択の重要性

本作『君の膵臓がたべたい』を通して、住野よる先生が最も読者へ伝えたかったのは、「意思と選択の重要性」ではないでしょうか。

作中では膵臓の病と戦う少女と、彼女と思い出を作るべく寄り添う少年が描かれました。

そんな2人の印象的な台詞と描写が以下です。

「違うよ。偶然じゃない。私達は、皆、自分で選んでここに来たの。君と私がクラスが一緒だったのも、あの日病院にいたのも、偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私達を会わせたの。私達は、自分の意思で出会ったんだよ」

住野よる『君の膵臓をたべたい』 双葉社

 誰も、僕すらも本当は草舟なんかじゃない。流されるのも流されないのも、僕らは選べる。

住野よる『君の膵臓をたべたい』 双葉社

本編の中盤から終盤にかけて、こうした「選択」「選ぶ」といったキーワードが数多く出てきたのが特に印象的だったんです。

運命が人を導くのではなく、数多の選択肢の中から、人自らが進むべき道を選びとっている。なんとも深いですよね……。

未来は誰にもわからない。けれど、幸せを噛み締める瞬間から瑣末な出来事に至るまで、人生を今よりも丁寧に生きたいと、私は心に留めました。

てるまれ

抗う事のできない死に直面した2人が考えていることだからこそ、この台詞と描写は強烈に読者に刺さるのかもしれません。

避けられない悲しみと、選択の重要性を示してくれた作品でした。

重苦しいテーマを扱う作品であるものの、登場人物の掛け合いは非常にポップで軽快。そのため、読書慣れしていない人にもオススメの1冊となっています!

ご一読いただき、ありがとうございました。

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