【和菓子に込められた願いを知る】和菓子のアン/坂木司

ページの隙間から失礼します。てるまれです。

今回はシリーズ化されている人気作、坂木司先生の『和菓子のアン』をご紹介します。

目次

あらすじ

和菓子のアン』はどんな人にオススメ?

  • 和菓子に込められた願いや想いを知りたい人
  • ユーモアなキャラクターたちの掛け合いを楽しみたい人
  • 百貨店で働く人々の日常を感じたい人

デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(うめもときょうこ)(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの18歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは? 読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる、美味しいお仕事ミステリー!

坂木司『和菓子のアン』 光文社

小説評価グラフ

てるまれ

下記グラフは、あくまで私個人の評価となります!

主な登場人物

梅本 杏子(うめもと きょうこ)

通称「アンちゃん」。高校を卒業したての18歳。ちょっぴり自虐的なぽっちゃり体型女子。
食べることが何よりも好きで、東京百貨店にある和菓子店「みつ屋」でアルバイトを始める。

椿 はるか(つばき はるか)

東京百貨店の地下食品売り場にある和菓子店「みつ屋」の女性店長。
完璧に業務をこなす美女だが、周囲がドン引きするほど株式投資にハマっている。

立花 早太郎(たちばな そうたろう)

「みつ屋」で働く男性社員。細身、長身、お洒落の三拍子が揃ったイケメン。
クールを装っているものの、実は可愛いものやロマンチックなものにすこぶる弱い超絶乙女系男子。

桜井(さくらい)

「みつ屋」で働く女性アルバイト店員。小柄で可愛らしい外見をしているが元ヤンキー。
杏子とは同い年のため、すぐにタメ口を使い合う仲になる。彼女の先輩であり良き理解者。

言葉のカギ

「和菓子」

本作『和菓子のアン』は、デパ地下の和菓子店「みつ屋」でアルバイトを始めたぽっちゃり女子・梅本杏子(通称アンちゃん)の視点で描かれる、日常の謎ミステリー小説です。

物語の核となるのは、和菓子に込められた歴史や願いなのですが、なによりも和菓子の描写が美味しそうでたまらないんですよね!

 ぷりぷりの寒天にからむ、液体と化した餡。あまりの口溶けに、しばし私は無言になった。普段自分が食べていたお餅の餡は何だったの、と言いたくなるくらいの上品さ。みつ屋の上生菓子は一つ三百円から四百円もするので、ちょっと高すぎると思ってたけれど、食べてみれば適正な値段だと思う。

坂木司『和菓子のアン』 光文社

こちらはアンちゃんが「紫陽花」という和菓子の試食をした場面の引用。普段和菓子を口にしない私でも、思わず口元が緩んでしまう描写です。

ほとんど名前も知らなかった「紫陽花」というこの和菓子、調べてみると本当に綺麗なんですよね。本当に食べれるのかと疑ってしまうほど、まるで宝石のように美しい和菓子でした。

和菓子の魅力を的確に伝えてくれる本作を読めば、きっと読者の皆さんはショッピングモールや百貨店で和菓子店を探してしまうこと間違いなしです!

てるまれ

読了した翌日、作中にも登場した「青梅」を和菓子店で購入してみたんですが、その上品な美味しさに思わず驚いてしまいました! リピ確定——というより、和菓子にハマっちゃいそうです!

「歴史と願い」

スイーツといえば洋菓子ばかりが頭をよぎってしまう私。甘いお菓子は好きなのに、最後に和菓子を食べたのはいつだったかな——と考えてしまうほどです。

そう。和菓子って、普段口にしない人にとっては馴染みのないものだったりしますよね。

しかし、本作はそんな和菓子に馴染みのない人でも大いに楽しめる作品なのです。

作中の謎の多くは、「和菓子の歴史」「和菓子に込められた願い」にまつわるものなのですが、これが知れば知るほどに面白い!

詳しく書いてしまうとネタバレになるので、ここは本作の主人公であるアンちゃんの言葉を引用して、その魅力を伝えたいと思います。

 人生で初めて、男性から手を握られて望まれた日。私はあらためて和菓子の勉強をしようと心に誓った。だって『源氏物語』の登場人物とおなじお菓子を今でも食べられるなんて、すごいことだよね。

坂木司『和菓子のアン』 光文社

本作はアンちゃんのラフな語り口調が癖になる読みやすい作品ですが、こうした彼女の心象描写ひとつひとつに、和菓子に込められた「歴史」や「願い」を感じることができ、じんと来てしまいます。

てるまれ

「『源氏物語』とおなじお菓子を今でも食べられる」なんて、とてもロマンチックですよね! 購入した和菓子の歴史について、食べる前に調べてみるのも面白そうです!

「びっくり箱」

アンちゃんが働く和菓子店「みつ屋」には、個性豊かなメンバーが勢揃い。

業務接客だけでなく部下への接し方も完璧でありながら、他の従業員が引いてしまうほど株式投資にどハマりしている椿店長。

ほっそりとした体型で私服センスも抜群なクール系イケメン、しかし裏の顔は恋バナやロマンチックなエピソードが大好きな超絶乙女系男子の立花さん。

他にも小柄で可愛らしいけれど元ヤンだった桜井さんや、人情に溢れたお酒売り場の楠田さんなど、アンちゃんと同じ食品売り場で働く人たちは「こんなメンバーと働けたら楽しいだろうな」と思えるような人たちばかり。

 アルバイトを始めてはや一月。すっかり慣れた地下通路を歩きながら私は思う。
(あの店、びっくり箱みたい)

坂木司『和菓子のアン』 光文社

そんな個性豊かな仕事仲間たちのことを、アンちゃんは「びっくり箱」と例えるんですよね。まさにそう! とニコニコ顔でうなずいてしまいます。

仕事仲間だけでなく、「みつ屋」へ謎を抱えて訪れるお客さんたちも印象的な人たちばかり。和菓子を題材にした日常の謎ミステリーとしてだけでなく、お仕事小説としても楽しめる本作は、きっとどんな人も楽しめる作品かと思います!

ひとことレビュー

ライトな読み心地ながらも、くっきりとした余韻を残してくれるお仕事✖️ミステリー小説でした。シリーズ化しているのも納得ですね。

「言葉のカギ」でも触れましたが、和菓子にまつわる歴史やそれに込められた想いが、単純に面白いというだけでなく、どこか切ない気持ちにもさせてくれて、各エピソードの読後感はとても良かったです。

自虐的になることも多いアンちゃんは、ミステリー小説の主人公にしては親近感の湧く存在でもあり、読者の共感を誘ってくれます。

仕事・外見・暮らし方・考え方など、さまざまな部分がいい意味で等身大な彼女は、ユニークな登場人物の中にあってもしっかりとその輝きを放っていました。

次回作ではどんな和菓子に秘められた謎に出会えるのか、そして個性的な仕事仲間たちとの関係はどうなるのか。続いていく物語に興味がそそられてしまいますね!

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ご一読いただき、ありがとうございました!

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