【猫って”処方”するものだっけ⁉︎】猫を処方いたします。/石田祥

ページの隙間から失礼します。てるまれです。

今回は、第11回京都本大賞を受賞している作品、石田祥先生の『猫を処方いたします。』をご紹介します

目次

『猫を処方いたします。』はどんな人にオススメ?

  • 心温まる小説が読みたい人
  • 気軽に読める短編小説が好きな人
  • 可愛い猫たちの描写を楽しみたい人

猫、かわいいですよねえ。

猫ちゃんを飼っている方たちは、日頃からその存在に癒しをもらっていることかと思います。

患者に猫を処方する摩訶不思議な病院「中京こころのびょういん」。

本作『猫を処方いたします。』は、この病院での診察の様子や、猫を処方され預けられた患者たちの変化を描く物語。

もし、そんな素敵な病院があるのなら、ぜひ足を運んでみたいものですね!

調べてみると、猫の動画や画像を見ることでのストレス緩和効果について、研究論文なども発表されているみたいです。

てるまれ

不思議な物語ではあるものの、あながち間違いばかりではないのかもしれませんね!

てるまれ

下記グラフは、あくまで私個人の評価となります!

京都市中京区の薄暗い路地にある「中京こころのびょういん」。
心の不調を抱えてこの病院を訪れた患者に、妙にノリの軽い医者が処方するのは、薬ではなく、本物の猫だった!? 
戸惑いながらも、決められた日数、猫を「服薬」する患者たち。 気紛れで繊細、手がかかるけど愛くるしい猫と暮らすことで、彼らの心も少しずつ変化していく。
そして医者が猫を処方するのには、ある「理由」があって――
猫と人が紡ぐ、もふもふハートフルストーリー!

石田祥『猫を処方いたします。』 PHP研究所

病院を訪れる患者たちの苦悩

中京こころのびょういんはメンタルクリニックという噂で通っているため、診察を希望する者は大なり小なり、何かしらの精神的な悩みを抱えています。

読み進めていて気がついたのは、仕事の悩みで診療を希望する人間が多いということ。

やはり仕事上のストレスというものは、現代を生きる上で切っても切れない関係なのでしょう。

読者の多くもそれに苦しめられた経験があるはず……。

だからこそ分かるのです。患者の皆さんはきっと、藁にもすがる思いで中京こころのびょういんを訪ねてきたのだと。

てるまれ

それでいきなり猫を預けられたのだから、患者たちはさぞビックリしたことでしょうね。

猫を”処方”された患者たちの変化

そんなこんなで、突然猫を処方——もとい渡されてしまった患者たち。

慣れない猫のいる日常に最初はてんやわんやしながらも、徐々にその生活に順応していく中で、彼らはそれぞれの悩みを解決するきっかけを得ていきます。

特に私が好きだったのは第四話です。

この話では完璧主義のキャリアウーマン・高嶺朋香が、どうすれば他人に寛容になれるのかと病院に相談を持ちかけます。

自他共に認める「ちゃんとしている女性」である朋香。

ところが、処方された猫があまりにも魅力的すぎたため虜になってしまい、仕事中にうつつを抜かしてしまう始末。

かなりの荒療治ではあるものの、彼女が猫たちと共に生活し肩の力を抜いていく姿はたいへん微笑ましく、同時に最も「本作らしさ」を感じました。

てるまれ

完璧主義のバリキャリが帰宅した途端に甘え声を出してしまうなんて……。まったく猫の魔力とは底知れないものです……。

「中京こころのびょういん」の真相

本作の最大の魅力であり謎でもある、中京こころのびょういん

その真相は、最終章である第五話で描かれます。

猫好きであれば誰でも憤るであろうある問題が、本作の根幹に関わっていくことが徐々に明かされていくのです。

ネタバレになってしまうので詳しくは記載できませんが、コミカルなこれまでの話とは一転して切なさが強調されており、私はかなり好みでした。

てるまれ

陰鬱な雰囲気というよりは独特な妖しさ・奇妙さを押し出している物語のため、そこまで不快感は強くありません。読む手が止まることはないので、安心していただきたいです。

コミカルさを助長させる、猫の立ち位置

さて、本作のキーパーソンである猫の存在ですが、中京こころのびょういんでは彼らを薬のように扱います。

この描写にはたびたびクスッと笑わせられました!

「猫を処方します。しばらく様子を看ましょう」

石田祥『猫を処方いたします。』 PHP研究所

「もっと強い猫がええですか?」

石田祥『猫を処方いたします。』 PHP研究所

「ちょっと強めの猫打ちましょか」

石田祥『猫を処方いたします。』 PHP研究所

こんな風に、患者と読者は半信半疑でも、猫は医者から効能がある薬同然の扱いを受けているんです。

真剣な悩みを告白する患者たちと、さも当たり前かのように猫を処方するお医者さん。

この温度感のギャップが、最高に魅力的なんですよね!

コミカルさと感動を両方兼ね備えつつも、軽やかな文体でとても読みやすい作品です。

心穏やかになる読後感も心地よく、次回作もぜひ読みたいと思わせてくれました。

シリーズは三作品目まで刊行されているようなので、ぜひとも読破したいところ!

さて、はじめてのレビューを上手く書けているか心配になのですが、ここら辺でお暇といたします。

ご一読いただき、ありがとうございました。

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